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ごめんね。
小さなバケツに住まわせていたヤドカリに謝る。
せっかくみんなが住めるお家を作ったのに、崩れてしまったの。
海辺に作った砂のお城。
ひとりひと部屋以上も作ったの。
でもね、砂で作ったお城は完璧ではなくて、水に弱くて、だから波がさらって行かないように離して作ったのに、雨が降った。
やまない雨。
強弱をつけながら、雨が降り続き、砂のお城の塀が溶け始めて崩れ始めた。
豪雨のなかお気に入りの人形を連れて、傘もささずにずぶ濡れになって、手を握り締め、ただ呆然とその様を見つめることしかできなかった。
雨に打たれ溶けるように傾き崩れるその姿、その様さえ美しく見えて、雨か涙かわからない滴を頬に流しながら、砂のお城が砂に還るその姿を、絶望に似た感情で、けれど、その儚さに心震えながら見つめる。
砂に還してあげる。
砂は砂の元へ。
ヤドカリさんもお帰りなさい。
人に作られたお城よりも、あなたの住むべき形の住処へ。
やまない雨。
その雨に打たれて、長い時をかけて作った砂のお城が砂に還る姿を、ただ見つめることしかできないわたしは、人形の手を握り締めながら砂に膝をつき、両手で砂を握りしめて絶望に似た感情を抱きながら、諦めと解放に溶けて、共に砂に溶けてしまいたいと願う。
やまない雨は、砂のお城を砂に還し、すべてを砂に還し、砂をこの星に還すまで降り続けるだろう。
ヤドカリも、人形も、わたしのことも。
そして海辺の砂は波に飲まれて海に還り、この星のすべては海に還っていく。
雨は、それまで降り続けるだろう。星を水で満たすために。
波が立ち、荒れ、太陽が雨雲を裂き、穏やかにな小波になるまで。
来るだろうか。
やまない雨に打たれながら星に問う。
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