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 もうすぐ五十だから腰がね、なんてぼやきながら席を立ち、白衣の背中を丸めながら、ポットやマグカップの置かれた棚に近づく。  棚の中には紅茶の缶に日本茶、ほうじ茶、ウーロン茶、コーヒー(しかも、インスタントではなくレギュラーコーヒーだ)そしてハーブティが並んでいる。その隣に備え付けられた小さな冷蔵庫の中には必ず牛乳と、夏になれば水出しの麦茶まで入っている。カフェでも始められるんですか、とよく冷やかすのだが、その度に「それでもいいかも」と存外真面目に考えだすのでたまったものではない。 「そうそう、昨日『うずまき屋』のカステラを貰ってねえ。これから開けるんだよ」  なんて言いながら、いそいそと飲み物を選び始めている。鼻歌すら歌いだしそうな様子に、俺は呆れて苦笑すら浮かべることも出来ない。  あなたの頭や手は、ただ美味しいお茶を淹れるためのものではないのに。 「芳田(よしだ)さん、ろくに俺の報告書も読まずになにやってるんですか」 「ちゃんと読んだよー、酷いなあ。ああ、高橋くんはどれにする? 紅茶もコーヒーもたくさん……」 「俺はカフェイン苦手なんです。ええと、牛乳は――」
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