あの城を目指して

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ほんとに些細なことなのよ。 貴方が単にその時そこに居たからということ。 人生を行く道を辿るのは、きっとそんな些細な事で積み重なっているのかもしれない。 ちょうどわたしが結婚を考えた時に、貴方とは出会ったわ。 春の桜が咲く時だった。 それだけでも、花咲く明るい心象漂うわ。印象良し、よ。 でも貴方との会話。正直わたしはあくびが止まらない程つまらなかった。貴方は秘密主義で、物事や自分のことを表現するのに、ほんの表面を撫でるくらいのことを延々と喋るのだもの。 わたしはそれにあくびしながら付き合った。 貴方はわたしを、優しく自分の話をきいてくれて、 受け入れてくれる人だと思ったのね。 暫くののち、貴方はわたしに結婚を申し込んだ。 半ば投げやりにわたしはそれを受け取った。 全てが叶う人生などないと今でも思っているわ。 貴方はいい夫よ。悪くもなく特別でもなく。 この毎日のあくびに耐えられるうちは。 貴方がそこに居たから、それはどちらかというと、決定的でそして致命的だったとも、言えるわ。 次の人にはもう少し、失敗しないの。
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