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第一話
「エクソシスト呼んどいたからさ、それっぽい人来たらまあ適当にアレしといてよ!」
数年前に訪れたきりだった母方の親戚宅。ひさしぶりに会った叔父の旧は、朝方玄関先に現れた僕にそう言い置いて鍵を手渡すといそいそとパチンコを打ちに行ってしまった。
雑然とした居間に申し訳程度の食卓として据えられたちゃぶ台の上には、
〈樹くんへ いらっしゃい!れいぞうこにプリンあるよ 手作りだからはやめに食べてね 旧より〉
と書き置きがある。
連絡のやりとりだけはあったものの、叔父と最後に顔を合わせたのは僕がまだ幼い頃だった。そのためか、彼は今でも僕をまるで小さい子供のように思っているみたいだ。だがあいにくと、十五歳の高校一年生は絶品手作りプリンで丸め込むことができるほど幼くはない。
「というか、それを書き残す余裕があったらエクソシストがどうとかっていうのを説明して行って欲しかったな……」
僕はため息をひとつ吐いて、窓の外に広がる六月の濁った空を見上げた。
だだっ広い田舎の家に取り残された僕の手には古びたスコップ。なんの為かと問われれば、もちろん護身用に決まっている。こんな道具を持ったところで、実際に吸血鬼に遭遇したら敵うはずもないのだが。
なんだか馬鹿馬鹿しくなって、僕は構えたスコップをそっと置いた。
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