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木梨がみんなの顔をぐるっと見回す。岩屋の暗がりの中でもわかるほど、木梨の目が爛々と不気味に光っている。
「そのうちの一人がうちの先代の社長でさ、肩書まで書かれていたからピンときた。この会社のイベントで何かあったんだなって」
そこからは簡単だったよと薄笑いを浮かべた木梨は、狭い岩屋の中をウロウロと歩き出した。
その足音を聞きながら、スグリは他のメンバーの顔を覗き見た。戸惑いと恐れ。そのイベント会社に就職して、自分たちに復讐しようとここまで画策した木梨が、これから一体何をするつもりなのか。スグリは恐怖よりも怒りが湧いてきた。
「十年前のミステリーツアーの参加者は今ここにいる俺たちの他に、あと三人いた。俺の両親とおまえの父親」
木梨が人差し指をスグリの鼻先に突きつける。その手をスグリは払うように叩いた。
「そうよ、パパはあんたを助けようとして死んだ! うちはママが私を産んですぐに死んだから、パパが男手一つで私を育ててくれてたのに。私の大事な大事なパパをあんたが奪った! 本当に何も憶えてないの?」
「俺を助けようとして?」
記憶を呼び覚まそうとするかのように、木梨は右手で眉間を抑えた。目を見開いて俯く姿からは深い苦悩が窺える。
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