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「さっきの二股に分かれたところ。あそこで翼くんはみんなの目を盗んで一人だけ右に進んだの。私は最後尾で翼くんと手を繋いでいたから、『ここに隠れてることは、みんなには内緒だよ』って言われた。指切りしたの。『針千本飲―ます!』って」
スグリにとっては、あれが呪縛となってしまった。針千本はありえないとわかっていても怖かったから。
翼くんの手を離れたスグリはすぐに父親のそばに駆け寄って、その大きな手の中に自分の手を滑り込ませた。翼くんのかくれんぼはなぜか嫌な予感がした。
スグリが来た道とは違う道を進みだすと、木梨も他のみんなもついてくる。あの龍のオブジェは二股に分かれた道の合流点でもある。
「私たちが龍のオブジェのところにあった指示書を読んでいると、『わーっ』という翼くんの悲鳴が聞こえたの。翼くんのご両親は真っ先に岩屋の入口に向かって走り出した。誰もが翼くんが足を滑らせて海に落ちたと思ったんだよ」
ハッとしたように木梨が足を止め、その大きな目をさらに見開いた。
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