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――みんなには内緒だよ。約束だぞ。
あれは誰の声だったんだろう。
ふとした瞬間に思い出しては、なぜか胸がギュッと痛くなる。
そんなスグリの元に奇妙な封書が届いたのは、五月の初めのことだった。
「『ミステリーツアーへのご招待』? アミューズメントパークか何かでやるの? それともバスか電車?」
「島だって」
「島⁉ うわー、胡散臭い」
親友の亜紀に話すと、そう言われてしまった。
無人島で日帰りアドベンチャー。確かに怪しさしかないが、一生に一度ぐらいはやってみたいような気もする。スグリの心は揺れていたが、まさか本当にツアーに参加できるとは思ってもみなかった。
スグリは幼くして実の両親を亡くしている。子どものいない叔父夫婦に引き取られたが、ずっと親身になって育ててもらっていたので、無人島のミステリーツアーだなんて絶対に反対されると思っていた。
ところがダメもとで話してみたら、案外あっさり「行ってきたら」と言われ、ツアーに参加することになったのだ。
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