鵺の島

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 集合場所は港区の桟橋。朝の海は静かで、桟橋には人影もまばらだ。潮の香りが漂う中、集まってきた参加者は六人だった。  スグリ以外はみんな三十代ぐらいの大人で、一番年齢が近そうなのはイベント会社の担当者の木梨という男性だ。おそらくこういうイベントを任されたのは今回が初めての新人だろう。落ち着かない様子で貧乏ゆすりをしていた。 「皆さんの携帯電話は、今ここで私がお預かりします。また、船に乗り込んだ後は窓の外を見ることは禁止とさせていただきます」  木梨の説明は参加申し込み後に送られてきたメールにも書かれていたことだ。  東京都にはレジャーアイランドとなっている無人島がいくつもある。その中の一つが今回の会場となるわけだが、島の地形や島内の建物の位置などを知っている参加者が一人でもいるとフェアでなくなってしまう。  スマホの位置情報で調べたら一発でわかってしまうので、携帯電話を預けることに反対する者はいなかった。  高速ジェット船の乗船口で木梨からリーフレットを受け取ると、参加者たちは一階に降りて座席に座って待つように言われた。  ミステリーツアー『鵺の島』。  スグリはリーフレットのタイトルを見て首を傾げた。
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