預言者の指は知っている

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「部長! どうして俺がお茶くみなんかしなきゃならんのです!」  青年は部長の机を乱暴に叩き、眉を逆ハの字にさせた。  一方の部長は扇子を広げ、青年の主張などどこ吹く風といったようすで、きっぱりと言った。 「選ばれたから仕方がないだろう。文句は受けつけん」 「だったら、せめて理由を教えてください。俺は今、新プロジェクトを任されていそがしいんですよ。お茶くみはどっかの暇なやつにでもやらしときゃあいいんです」 「そうか。きみは新入りだから知らんのだな」 「なにをです?」 「うちの社にはな、『人事部預言課割り振り係』という部署があるんだよ。そこでは、だれにどんな仕事をさせるかを決めていく。つまり、おまえを選んだのは、そこにいる社員だよ」 「だったら、そこへ直談判してきます!」  啖呵を切るや否や、青年がやってきたのは、社内でも倉庫や資料室となっているフロアの一角だった。節約のためか蛍光灯の本数を減らしており、廊下は薄暗い。その並びに、『人事部預言課割り振り係』はひっそりと存在していた。
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