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メバルはもともと頭が悪くはなかった。だが、わからなくなった時、誰も質問する人がいなかったのだ。中之島は週に3日も塾に通っていた。外見もメガネをかけて誰が見ても優等生。一方で、遅刻ばかり、忘れ物ばかり、落ち着きのないメバルを、教師は劣等生と決めつけた。だが、この日、メバルは自分の頭が悪いのではないことを知り、算数の面白さを知ったのだ。
それから、毎朝、朝食のテーブルに凪平からの問題が置いてあった。メバルは一日中その問題について考えた。時にはボ~ッとして電柱にぶつかったり、猫を踏んづけたりした。だが、答えがわかった時、これ以上の喜びはなかった。凪平が帰るのが待ちきれなかった。二人は一緒に風呂に入り、湯気で濡れた鏡で幾何学の問題を解いた。
父の後を追い、メバルは数学科に入学し、博士号をとり、結婚した。天才的なヒラメキで斬新な定理をいくつも発見した。
そして、教授になったメバルは、相変わらずおっちょこちょいで、片付けは出来なかったが、教授秘書が全て管理し、家では妻が文句を言いながらも片付けをしてくれた。持ち前の明るさで、「でへへ!いつもありがとう」と頭を掻いた。それで済まされる・・・特な性格だった。だが、以前はこれを障害とよんでいたのだ。
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