ひとつしか食べてないのに

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ひとつしか食べてないのに

私が、まだ幼い日の話である。 ひとつしか食べてないのに、みかんが無くなった。 母に、ひとつしか食べてないのに、みかんが無くなったと話した。 母は、空になった箱、おしいれ、納戸、台所と、ひとしきり探したあと、 ふと思いついたように、私に訊いた。 さっきもひとつ食べたべ? うんと返事をすると、 今朝もひとつ食べたべ? うんと返事をすると、 昨夜もひとつ食べたべ? うんと返事をした。 母は笑った。 それで、わかったと笑った。 1回にひとつずつ食べて、食べ尽くしてしまったのである。 幼い私には、ひとつしか食べてないのに、みかんが無くなった訳がわからなかったのである。 母は、笑って、次の1箱を買ってきてくれた。 みかんは大好きで、 手が黄色くなるまで食べたものである。 とっつぱれ
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