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 「……ヒーロー」  妻が食器をカタカタと言わせながら呟く。  「えっ、何だって?」  一瞬、妻の口から出た言葉を理解できなかった。  「あの子の夢よ。 ヒーローになりたいんだって」  そこでようやく妻の言葉を理解できた。  「そうか、ヒーローか。 アイツもちゃんと夢持ってんだな」  「何言ってるの……バカじゃないの!?」  妻が私にフォークを投げつける。   もう少し左にいたら間違いなく額に刺さっていただろう。  「何をそんなに怒ってるんだ。 私は何も言ってないじゃないか!?」  「それがムカつくのよ!!」  皿が床に叩きつけられ、粉々に割れる。  「いい歳した息子が……中学生の息子が……  ヒーローなんてバカげた事言ってるのよ?  それなのに……それなのにアナタって人は……」  妻が泣き崩れる。  「所詮は子供の夢だ。 コロコロ変わってくものさ。 そうだろう?」  どうにか妻を落ち着かせようと必死にフォローする。  「そうだけど……心配なのよ、私は」
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