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 実は私も、子供の頃ヒーローになりたかった。  自分でもバカげた夢だったと思っている。  テレビで見たようなヒーローになりたかった。  仮面ライダーのような、正義の使者に。  ウルトラマンのような、光の戦士に。  スーパーマンのような、超人に。  みんなが憧れる、みんなが応援してくれる、そんな英雄に。  でも今はどうだ?  正義の使者にも、  光の戦士にも、  ましてや超人にもなれなかった。  夢はいつか覚める。  夢から覚めて、一人だった私に  手を差し伸べてくれたのが妻だった。  今その妻は、私のせいで悪夢を見ている。  だから私は、かつて妻がくれた言葉を返そうと思う。  「ヒーローなんて、なりたくてなれるもんじゃない。  それは私が一番よく知ってる。 ブラウン管の向こう側を  ずっっと観てた方が幸せだよ」   なんて無力なのだろう。   なんて情けないのだろう。  かつてヒーローに憧れ、ヒーローになる事を夢見た男が、  こんな形でしか、妻を救えないなんて。
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