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 「それ……私が昔言った言葉……」  「あぁ、そうだよ」  「……あの頃のアナタは、ホント泣いてばかりだったわね」  「今でも変わらないよ」  実際、妻の居ないところで泣いていたりする。  何も変わっていないのだ。  「私がアナタを選んだ理由……知ってる?」  「何だい?」  「守ってあげなくちゃって……そう思ったからよ。  でも今じゃ……立場がまるで逆ね」  何を言ってるんだ。 私は未だに守られているんだ。  君という存在に。   守られていたから、今私は此処に存在しているんだ。  君がいたから……。  「君が居てくれたから私は強くなれたんだ。 だから……」  ぎこちなく、でも出来るだけ優しく妻を抱きしめる。  「だから頼む。 泣かないでくれ」  そう言っているとうの私は、泣きじゃくっているワケだが。  「ハハ……アナタが泣いちゃダメじゃない」  妻は涙を服の袖で拭きながら笑った。  「けど……ありがとう」  さっきも見たはずだが、とても久しぶりに妻の笑顔を見た気がする。  まるで、何年も見ていなかった様な気分だ。  「でも今じゃ、ブラウン管っていう表現は古いわね」  確かに。 自分で言ってても古いと思った。  もう、そんなテレビ出回ってないんだろうなぁ。
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