八二

33/37
前へ
/37ページ
次へ
 これは誰の台詞だったか?  髪の長い、四人の女達の中の誰か、か?  それとも?  幸一は考える。  恐怖に顔を強張らせながら、頭の中をグルグル回る誰かの台詞に集中する。 『部長、何か気が付きませんか?』  何に? 『部長、何カ気ガ付キマセンカ?』  誰だ? 『ブチョウ、ナニカキガツキマセンカ?』  この誰かのセリフに自分は何と答えたのか? 『…………ナニカ気ガツ……キマセン……カ……』  ナニニ? 「何に気付いていれば良かったんだ!」  幸一は立ち上がり、叫ぶ。  幸一の叫びに答えるかの様に部屋に再び明かりが戻った。  静かだ。  部屋は静かだ。  幸一が呼吸する音以外は何も聞こえない。  幸一は、目だけ動かし、テーブルの上の小包を見る。 「!」  幸一は目を見開いた。  テーブルの上に小包は変わらず載っていたが、その中身が消えていた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加