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「髪が無い! どうなって……」
幸一はテーブルに近づき、空っぽの小包を凝視する。
髪は一本残らず消えていた。
まるで、初めからそんな物など無かったかの様に髪は姿を消してる。
「俺は悪い夢でも見ていたのか? しかし、包みはあるよな……」
しばらくぼんやりと空の小包を眺めていた幸一だったが、落ち着いて来たのか、ため息を付き、深く頷いた。
「そうだ、そうだよな……夢……夢だったんだよ! 髪なんて送られて来なかったんだ。夢で無ければ何かの間違えで……きっとそうだよ」
幸一は安堵の表情を浮かべる。
(香美代に電話しよう。浮気の事を謝って、戻って来てもらおう。大丈夫、きっと許してもらえる)
幸一は、空の小包を手に持ち、両手でそれをクシャリとつぶした。
部屋は静かだ。
とても、とても静かだ。
何事も無かったかの様に、聖夜にふさわしく、静かだ。
だから幸一は気が付かない。
彼のすぐ後ろに、白目の女が立っている事に。
彼女は、首を後ろに反らせた状態でゆらゆらと動いている。
彼女の足下には、黒く長い美しい髪が散らばっている。
彼女からは微かにシャネルの№5の香りが香っている。
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