魔法少女の条件

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 「ミリアッ、ミリアッ!」  駆け寄った先のミリアは魔法の力がなくなったからか、いつもの制服の姿に戻っていた。回復が追いつかなかった手と足が変な方向へと向いている。ユーナはチリチリと羽の音でミリアの深層意識に刺激を送るが、全く反応がない。  ニョロニョロとした気持ちの悪い怪物は、ミリアが事切れたのを確認したからか、ズチャズチャと重い体を引きずって、次元の奥底へと戻って行った。  眠ったように目を瞑るミリアにすがりつく。 「起きてよ。ミリア」  ミリアが目を覚さないことは経験からわかっているが、それでも願ってしまう。 「起きて……」  祈りは届かない。ユーナはどさりと黒光りする地面に体を投げた。 「あーあ。また、負けちゃった」  ヨイショ、と体を起こして、羽を最大限に震わせる。  チリチリチリチリチリリリリリリリ!  という大きな音とともに、ミリアの体がゆっくりと溶けて煙となっていく。 「バイバイ、ミリア」  またイチから魔法少女を探し直しだ。  人生に絶望しながら希望を捨てきれず、かついなくなっても誰も探さない少女。  それが、魔法少女の条件だ。  ユーナの羽の音で周囲を操って、ミリアの境遇を全部化物のせいにすることで、闘争心を引き上げたというのに。  ミリアの境遇は人間が引き起こしたものだ。そこに、化物は微塵も関係ない。 「最初に化物がいる場所、めっちゃ計算したのに。もうちょっとだったのになあ。そしたら、あのクソ上司のこと見返してやれたのにい」  帰ったら報告書だ。報告書を書いたら、2年はまた研修をやり直さないといけない。 「めんどくさあ」  ユーナはチリチリと羽の音を鳴らして、別の次元へと飛んでいく。後に残ったのは、ミリアの砂となった一部のみだった。
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