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【2】
「それは、間辺のことが好きだから?」
それまでずっと黙っていた奥野くんが、静かに言った。
奥野くんの目にはもうさっきまでの熱はなくて、静かに凪いでいた。それを見て私は頷く。
間辺はあの夜の海で誰よりも楽しそうにはしゃいでいて、野宮くんが家の鍵を無くしたことも知らないだろう。私が服を褒めたとしてそんなこと絶対に覚えてないし、優しいねって言ったらきっと気持ち悪い、と顔を顰める。
そして何より、間辺は私のことを絶対に好きではない。
それでも私は好きだから、それが本物な気がしてしまうのだ。
同時に、今日の選択を絶対に後悔する日がくると私は確信している。
それでも。
さっきまで私の手元にあったあの石はいつの間にか掘り続けた砂の中に埋まってしまって、もう見えなかった。
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