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二組の教室に入り自分の席に座った。ガヤガヤと騒がしいくなっていく教室とは裏腹に心の中ではズシズシと沼に沈んでいくように静まり返った。
中学二年生になる今の今まで親友と呼べる人はいなかった。
それ故に、彼の気持ちに応えたいと強く思った。彼の信用を失うわけにはいかない。秘密を命にかえても守るにはどうすればいいのか考え込んだ。どうすれば...どうすれば...
「おい!内山いないのか!」
はっと前を向いた。周りからたくさんの視線が集まっている。
「あ、いるんだな。返事しろよ」
とぶっきらぼうに担任は言った。
あの担任は、席の場所どころか顔と名前覚えてないんじゃないかとお門違いのことを考えながら「すみません」と謝った。廊下ですれ違う時は名前で呼ばず「おい」とか「お前」とか、夏休み前の時なんかは「うちのクラスだったよな」と言うほど愛のない担任だったので、私が悪いとはいえむっとなった。
そんな担任のことよりもと思考を移動させようとしたとき、ふっと私もクラスメイトの女子の名前をほとんど覚えてないことに気が付いた。そして、秘密を漏らさない必勝法があることを同時に思いついた。
好きな人の名前を忘れればいいんだ。
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