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おまけ:R18部分
4話と5話の間のお話です。
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ジャケットを脱いでベッドに寝かされた途端、噛みつくようなキスが降ってきた。ただ乱暴なようでいて、的確に力の抜ける箇所をなぞっては唇をゆるく食み、呼吸したタイミングでまたなぞられる。互いの唾液を使ってわざと濡れた音を立てるたび、喉が震えてしまう。時々唇をくすぐる西山の吐息と声はもはや毒だった。
「は……っ、あ」
「白石……気持ちいいって顔、してる」
「なん、で顔、わかんだよ……」
こっちは薄闇ではっきりと見えていないのに、ずるい。恥ずかしい。
「よく見ればわかるよ。……なんて、うそ。お前の声聞けば、わかる」
西山の唇はそのまま首筋をたどり、胸元に到着した途端に止まった。ワイシャツの上から軽く舌で撫でられて、短く声が漏れる。気持ちいいというよりむず痒いというか、とにかく変な感覚だ。
「男も乳首弄られたら感じるようになるらしいぞ。お前のもそのうちそうなるかも、な」
「っん、ぁ!」
もう片方の胸をきゅっと摘ままれたかと思うと、押しつぶすようにこねくり回される。布越しのせいなのか、少しずつじんわりとした感覚が生まれ始めた。
「にしやま……なんか、変な、感じなんだけど……っ」
それに応えるかのようにネクタイを引き抜かれた。ボタンを外すためだと気づいた時には、むき出しになった二つの尖りを西山に愛撫されていた。
右側は濡れた音を立てながら頂を吸われ、軽く歯を立てられて。
左側は先ほどと同じ行為を、強弱をつけて繰り返されている。
短い吐息を混ぜた、変に高い声を止められない。
「……も、やめ……!」
「気持ちよさそうに見えるけど?」
どこか楽しそうな口調に少し苛立ちが浮かぶも、抵抗する力はもちろんない。
「それとも……早く、こっちを触ってほしいんだ?」
胸にあった手の位置が下がっていき、ある場所で止まる。わずかに力を込められただけでみっともないほどに反応してしまった。
「ああ、ちゃんとたってる……気持ちいいんだ……」
「ばか、しみじみすんな……!」
「いいだろ。だって、俺、本当に嬉しいんだ。お前とこういうことできるのが、嬉しいんだよ」
暗闇に慣れてきた目線の先で、西山が柔らかな笑みを浮かべている。
「……なんか、おれ、猛烈に恥ずかしい」
初めての恋人と迎えた夜を思い出した。確かな充足感と幸福感があるのに、どこか甘酸っぱい気持ちとがない交ぜになって落ち着けなかった時とよく似ている。
よく聞き覚えのある金属音が耳を打ち、正体を悟った頃には剥き出しの己自身を西山に愛撫されていた。
「あ、っく……ぅ、んっ」
的確に感じる箇所を攻められて声を、ゆるゆると動く腰を止められない。西山の大きな手のひらがたまらなく気持ちよくて、もっと弄ってもらいたいと欲が生まれてしまう。
「はぁ……っにし、やま……ぁ」
「ん……?」
返事をしながら、片手は頂を指の腹でぐりぐりと刺激し、もう片手は裏筋から根元にかけて爪先を這わせている。まるで陸にあがった魚のように背中が跳ねて、続けようとした言葉が喘ぎに変わった。
「一回、このままイカせてやるよ……」
濡れた音を存分に響かせて扱いた後だった。
爪先を這わせていた箇所に、今度はぬるりとした感触がゆっくりと、通り抜ける。さすがに驚いて、懸命に首を持ち上げた。
西山が、自分のモノを舌で、愛撫している。
理解した瞬間、頭の中が真っ白になった。
「ん、っあぁぁ……!」
溜まった熱が外に吐き出されて、全身の力がベッドに吸い取られる。
気持ちいい。その感想だけが頭を支配している。恋人という関係を差し引いても、同性にされて文字通りの「骨抜き」にされるとは思いもしなかった。
「お前、そんな顔するんだ」
息を整えるのに意識を集中していたせいで、西山に観察されていることに気づかなかった。
「ばか、見てんなよ……!」
身体を横向きにして逃げる。が、あっさり両手を捕えられ、布団に縫いつけられてしまった。
「喜び噛みしめてんだよ。どれだけ待ち望んでたと思ってんだ」
それを言われると押し黙るしかできなくなる。
「ていうか、お前は……いいの?」
西山も興奮しているのは、吐息の乱れぶりと熱さで充分に伝わっている。
「ん、俺はあとでたっぷり気持ちよくさせてもらうからいいの。そのために、こうしてお前にいろいろしてんだから、さ」
「っ、ひぁ!?」
息の詰まる痛みが思いもよらない場所から伝わってきて、たまらず西山に向かって手を伸ばしてしまう。
「ごめん、痛かったよな。でも、今だけだと思うから我慢して?」
労るように頭を撫でながら、唇を緩く食んでくる。心地のいい刺激に全身から余分な力が抜けていく。最初ほど不快感はなくなったが、まだまともな呼吸はできそうにない。
「く……っあ、はぁ……ん」
ゆるゆると中心を刺激されて、否が応でも甘い痺れが腰から広がっていく。濡れた音が吐息に混じって響き始めた時には、違和感がだいぶ消えていた。
「痛いとか、ないか?」
「それは、っん、ない……けど」
「けど、なに?」
「へん、きもち……わる、い」
下腹部が鈍痛に似た刺激を受け続けていて苦しい。どう考えても秘部が西山の指を飲み込んでいるせいなのだが一向に止まる気配はない。
「うん……でもさ、もう指が二本入ってんだよ。お前のここ」
内部で指が蠢いて、反射的に短い悲鳴が漏れる。
というか、二本ってどういうことなんだ。とても信じられないのに、蠢くたびに嘘でないのを思い知らされる。
「っ!? ひぁ、あ!」
下半身が大げさに跳ねた。
「……みつけた」
「な、なに? や、ぁあ!」
声が、腰の動きが止まらない。わけもわからず西山から与えられる刺激に翻弄されている。さっきとは明らかに違う、油断したらあっという間に支配されて抜け出せなくなるような、あまいあまい刺激。
「ま、にし……っあぁ、ん!」
圧迫感が増した。まさか、また指が増えたのだろうか。考える余裕はない。理性も本能もすべてが、快楽の先を求めてひたすらに手を伸ばしている。
「しらいし……すげー、気持ちよさそう」
感嘆したような声で呟く西山の肩を縋るように掴む。視界が少し滲んでいておぼつかない。
こわい。でも彼だから、西山だから信じられる。与えられるはじめてを受け止められる。
「はぁ、っあ……に、やまぁ……!」
「わかってる。俺ももう、限界」
ずるり、という擬音が聞こえそうだった。急な喪失感に戸惑っている間に、包装を破く音が響いて一瞬身体が固くなる。
同性同士との知識はなくとも、さすがにこの後どうなるかはわかる。
「……白石」
見下ろす双眸はまるでアンバランスだった。気遣おうとする気持ちがなけなしと一発でわかるほど、西山はただの獣と化している。
一握りの理性など、もう、捨ててしまえばいい。
「はやく……お前のしたいように、して」
懸命に頭を持ち上げて、熱に浮かされた呼吸を混ぜあう。一瞬で終わるはずもなく、ベッドに戻されながら唾液が頬を伝うほどの行為に変わる。
「いくぞ」
同時に、先ほどとは比べものにならないくらいの圧迫感が下半身を襲った。
まともに呼吸ができない。痛い、というよりただ苦しい。悲鳴にならない声が途切れ途切れに喉から溢れる。
「白石……っ、もうちょっと力、抜けるか……?」
首を振る。西山の訴えはわかるがどうにもできない。
「ふ、っん……ぁ、あぁ」
すっかり萎えてしまった自分自身をやわやわと愛撫されて、全身のこわばりが少しずつ和らいでいく。啄むようなキスを受け取るたびに鼻腔をくすぐる西山の匂いも、落ち着きを呼び戻してくれていた。
「あ……ぁ、っはい、った?」
「あと、すこし」
そして、安堵したようにゆっくりと倒れ込んできた。
「入ったよ、白石」
「……うん」
西山の形がはっきりとわかる。
「やっと、つながった」
「待たせて、ごめんな」
「ばか。そんなこと、もういいんだよ」
西山の柔らかい笑みになぜか泣きそうになる。
「そろそろ、動いて大丈夫か?」
頷くと同時に、埋め込まれたモノが大きく律動を始めた。余裕がないとわかる動きに、みっともなく声をこぼすしかできない。羞恥を覚える暇すら与えてもらえない。
指でさんざん刺激された箇所を突かれるたび、じんわりとした痺れが全身を支配していく。強烈な中毒性をはらんだそれを、必死に追い求めてしまう。
「んあ、あぁ! は、っんぁ!」
「すき、だ……白石、すきだ……!」
応えたいのに、漏れるのは聞き慣れない悲鳴ばかり。せめてもと、唇に覆い被さった吐息に向かって夢中で舌を伸ばした。意識までも溶けそうなくらいに強く絡め取られる。
手のひらに重ねられた熱をぐっと握り込む。何かに縋っていないと意識が保てないぐらいにぎりぎりの場所をさまよっていた。
もう限界だと、朦朧としながらも訴えた気がする。もう少しこの時間に浸っていたい気持ちはあるのに、初めて西山を受け入れた身体は正直だった。
「これからもお前のこと、大事にするから……絶対、守るから……」
おれも。
ちゃんと返せたか、自信はなかった。
過敏になっている自身を絞り出すように扱かれて、頭の中も視界も真っ白に塗りたくられてしまったから。
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