7話 ぼくのわからないこと

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7話 ぼくのわからないこと

 今日は日曜日。学校は休みで今はおかあさんと一緒にいる。  おかあさんが言うには、来週の土曜日におとうさんが帰ってくるみたい。  おとうさんはトラックの運転手さんをやっている。でも、おとうさんはどうして1ヶ月に1回か2回しか帰ってこないのかな。友達のちはるちゃんのおとうさんは毎日お家に帰ってくるって言ってた。おとうさんはぼくやおかあさんにたくさん会いたくないのかな?  ぼくにはわからないことがたくさんある。おとうさんのことや、突然怒り出してぼくをたたくおかあさんのこと。ぼくは、おとうさんよりもおかあさんのほうがこわい。叩かれる時はいつもビンタ。おなかにいる虫のいどころが悪かったらぼくをたたく。ちはるちゃんに話したら、それって八つ当たりだよと、言っていた。やつあたりってなんだろう?  ぼくは学校で遊ぶのは好きだけれど、勉強はキライ。どうしてかと言うと難しいから。それともっとたくさん友達がほしい。男の子でも女の子でも。おかあさんにこの前、友達100人できるかな? と言われた。そこまではいらないというのがぼくの気持ち。  誰にも言えない秘密がある。それはおかあさんより、おとうさんのほうが好きということ。こんなことおかあさんが聞いたらきっとショックを受けるかもしれない。  おかあさんは今昼ごはんを食べてからテレビを観ている。大雨でお家が流されているところが放送されている。ぼくはそれを見て気分が悪くなっちゃった。なので、居間から出た。後ろを振り返っても、おかあさんはチャンネルを変える様子はない。おかあさんの傍に行きたい。でも、ニュース怖いし。  おばあちゃんの部屋にきた。おじいちゃんは、ぼくが生まれてすぐに事故死した。おじいちゃんが対向車線をはみ出して正面衝突したらしい。即死と聞いている。おばあちゃんはまだ元気に生活している。今は、畑仕事をしている。そうだ、おばあちゃんの所にいこう!  外は夏真っ盛りって感じがする。とにかく暑い。じんわりと汗ばむのがわかる。おとうさんの大きめなサンダルを履いてぼくは畑にむかった。 「おばあちゃーん」  と、ぼくは叫んだ。  笑顔を見せて麦わら帽子を上にあげていた。 「しんご、暑いよ。帽子かぶっておいで」 「うん、わかったー」  と、言いながらぼくは一度家に戻った。玄関でおかあさんを呼んだ。 「どうしたの?」 「おばあちゃんに帽子かぶっておいでって言われたから帽子取りにきた」  おかあさんは何も言わずにぼくの麦わら帽子を持ってきてくれた。 「暑いでしょ?」  ぼくは頷いた。 「あんた、汗かいてるじゃない。ちょっと待ってなさい」  おかあさんはタオルを持ってきてくれた。 「ありがとう」  と、お礼を言った。おかあさんは、 「泥だらけになるまで遊ぶんじゃないよ」  と、言いながらぼくの首にタオルを掛けてくれた。  ぼくはそれ以上何も言わずに玄関を出て家の裏手にある畑に向かった。   「おばあちゃーん!」  ぼくは大声で呼んだ。  やさしい笑顔でおばあちゃんはこちらに振り向いた。 「しんご、どうした?」  ぼくはおばあちゃんにつられて笑顔を浮かべた。 「ねえ、おばあちゃん!」  おばあちゃんは目の前にいるのに大声で呼んだからか驚いていた。 「そんなに大きな声出さなくても聞こえてるよ」  苦笑いでおばあちゃんはぼくを見ている。 「あ、ごめんね。お家にいてもつまんないからきたの」  おばあちゃんは驚いたように、 「あら、おかあさんは?」  すでにおばあちゃんに笑顔はなかった。 「いるよ。いるけどテレビみてるからおはなししてくれないの」  ぼくが寂しい思いをしているのに気付いたのか、 「あら、そうなの。それはかわいそうに」  ぼくはおばあちゃんに言った。 「おばあちゃん、ボールで遊ぼう?」って  おばあちゃんは笑っている。 「ちょっと疲れちゃったからまた今度ね」  ちぇー、つまんないの、とぼくは思った。  そして、まあ、いいやと思い家に戻った。  
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