常連客

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常連客が扉を潜った後、客がほとんどいなくなったので私はレジの精算を始めた。“隣のレジをご利用下さい”という立て札を置き、レジを開けて小銭を並べる。並べている間はいいのだが、モードを切り替えて金額を入力する時があまり好きではない。モードが切り替わっている時は、商品の会計が出来ない。つまりレジが一時的に使えなくなるのだ。もし客が増えるなどの急用があればモードを切り替えて対応に当たらなければならない。そうしたら入力中の値は全てリセットされ、後でやり直しとなる。だけれど不思議なことに毎回急用は発生する。いきなり多くの客が入って来る、一人が片方のレジに来ると決まって何人か並び出す、さらには、立て札を見えるように置いてあるのにも関わらず、それを押しのけて商品を置く客もいる。  ズドーーーーーーーン!! 突然地響きのような音が店内に広がった。私はもちろん店内の客も驚いて、中には頭を抑えてかがみ込む客もいた。 「ワンワン!」 ワンワン・・? 扉の向こうには、柵に繋がれた小さな柴犬が吠えていた。飼い主はどうやらこの店の中で買い物中のようだ。そしてその柴犬の視線をたどると・・大男がいた。何かの拍子で尻餅をついたようで、痛そうにお尻を触っている。この地響きはこの人が原因なのか?いや、まさかな。
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