常連客

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大男は次の日もやって来た。中央の通路を通り、商品を持ってくる。 「昨日は悪かったな。思いっきりこけたのよ」 「あっ、そうだったのですか・・。お尻の方は大丈夫ですか?」 「ああ、問題ない。ありがとう」 そうして会計を済ませた。大男は去っていった。 それから三日間、勤務が無かったため私は友人を連れて日光へ旅行に行った。お金はかかるが、たまにはこういう息抜きも大事だった。 大男は同じ時間にやって来た。しかし今日の店内の様子はいつもと少し違った。大学生が沢山いる。何かのサークルだろうか。何のサークルにも入っていない私には知ったことではないが。しかしやたら多い。30人くらいはいる。それぞれの陳列棚に群がり、何かをただ話している。買う気がないのであれば早く出ていってほしい。こういう客が一番迷惑だ。大男もその様子に少し驚いているようだったが、彼はそのまま歩を進めた。中央の通路は凄く混んでいた。お菓子コーナーで、学生達はチョコレートなどポテチなどと指をさしてただ騒いでいる。大男は一度その前で歩みをとめ、少し困っているようだった。他の陳列棚も比較的混んでいる。唯一空いていたのは、出入口側にある雑誌類の陳列棚脇だった。漫画には立ち見防止のためにテープを貼ってあるからだろう。そういえばそのコーナーに変わったものが売られていた。 キジの羽を使った猫じゃらし。需要なんてあるのだろうか。   私はその陳列棚が一番空いているということを大男に伝えようと思い、レジから離れた。 しかしその時である。店内が一瞬にして静まり返った。大男はそのまま中央の通路を歩き始めた。学生達は道を開けるようにさーっと引いた。無言だった。私には何が起こったのか理解出来なかった。
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