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人事課長が僕を呼んでいる。課長がそう僕に告げたとき、周りにいる同僚たちの動きがピタッと止まった。皆の視線が僕に集中した。
いよいよ来るべき時が来たか、リストラ候補第一号は僕だったか。僕は覚悟して人事課に行った。けれど、人事課長の口から出た言葉は意外なものだった。
「マツシタさん。ロサンゼルス営業所に行ってください」
「はあー」
馘だ、と言われると思っていた僕は、間の抜けた返事をした。
会社は何を考えてるんだろう。会社が危ない時に、僕のようなお荷物社員を馘切らないなんて。それどころか海外に転勤だなんて。
僕にとっては悪いことじゃないけれど、何かすんなりと納得できない感じがした。
人事課から戻って席に座ると、オクヤマさんが「どうだった?」と声を掛けてきたので、「ロサンゼルス営業所に転勤です」と答えた。
「凄いな。栄転じゃないか。俺はてっきりマツシタは馘だと思ったがな」
オクヤマさんは驚いた顔で言ったけど、言い過ぎたと思ったのか「すまん」と謝った。
「いいんですよ。誰が考えたって、不良社員の僕なんてリストラ対象ですからね。なぜ僕が馘にならずにロサンゼルスなのか、さっぱり分かりません」
「俺も不思議に思うよ。会社は何を考えてるんだろうな」とオクヤマさんも首を捻ったが、
「でも、とにかくよかったな。で、転勤はいつなんだ」
「それが早いんです。再来週です」
「急だな。送別会は俺に任しとけ」
オクヤマさんはいい先輩だ。
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