開かずの部屋

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　万年健康食品の本社ビルには開かずの部屋があった。
　他の会社でもそうだと思うけれど、ビルの各部屋の入り口には「総務課」とか「会議室」とかのプレートが掛かっていて、その部屋にはどこの部署が入っているとか、何に使われてるとかが分かるようになっている。ところが、本社ビルの一階には何もプレートが掛かってない部屋があった。
　僕が入社して三年になるけど、その部屋に出入りする者を見たことはなかったし、何のためにあるのかも分からなかった。先輩たちに聞いてみたけど、「倉庫じゃないの」と言う人もいたし、「そんな部屋あったっけ」と興味なさそうに答える人もいた。皆その部屋には関心ないようだった。けれど、僕はなぜかその部屋のことが気になって仕方なかった。僕は何の部屋だろうと思って、何度か中に入ることを試みたが、ドアノブを回しても決してドアが開くことはなかった。
　開かずの部屋――その部屋を僕はそう名付けた。