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「ランカがハルトのこと、好きって知ってたから言わないつもりでいた。でも、いなくなったのに気づいて、本当に心配で。どうしてもランカに一目会いたくて。気がついたらここに来てた。
俺じゃ、ハルトの代わりにはならないけど。それでもランカのことが好きな気持ちは誰よりもあるから。俺は、ランカの側にいたい。」
言葉数が少ない彼が、精一杯私に伝えてくる言葉は、私の涙を止めるには十分だった。
「だけど、私。ただの魔法使いで……美人でもなんでもないのに。」
「俺はランカの笑顔に元気づけられていた。俺が怪我したとき、魔法で治してくれて。自分も辛いのに、仲間を励まして。そんなふうに優しい君が、俺は好きなんだよ。」
飾りっ気のない言葉が、こんなにも嬉しいなんて知らなかった。自分を思ってくれている人がいる。そして、こうして会いに来てくれた。
それが、心から…嬉しい。
「すぐに返事がほしいわけじゃない。…ただ、俺を少しずつでいいから意識してほしい。」
「ありがとう。でも、レンは王都へ帰るんじゃないの?それなのに、返事を遅くするのは気が引けるというか…」
それに対して、レンはまっすぐ私を見つめ返してきた。
「いいや。俺は王都へは帰らない。さっき言ったと思うが、俺はランカの側にいたいから。ここで、俺なりに働いてみる。」
「レンって…シーフだよね。冒険者に戻らないの?」
「冒険者も気楽でいいけど…ずっとパン屋やりたかったんだ。魔法使いの奥さんと一緒に。」
そう言って、レンは少し微笑んだ。あれ?レンってこんな茶目っ気がある人だったっけ。知らない彼の一面に少し胸がどきどきした。
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