ウェストミンスターの吸血姫

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「まったく、お前は昔から変わらぬ大馬鹿者だ。意地を張らずにさっさとやってしまえばいいものを」  黒いドレスに身を包み、その鮮やかで長い金髪を片手で弄りながら、女は不機嫌さを隠そうともせず言い放った。  その深紅に染まった美しい瞳一杯に、侮蔑の意を込めて横たわる男を睨み付ける。  男は黒いロングコートを身に付けているが、それは所々ボロボロに破れていて、腹部には血が滲んでいた。 「お前のその様、いずれそうなることは何年も前からわかっていたことだろうに。ただの人間にそこまでやられるとは情けない。つまらぬ矜持など捨ててしまえ。楽になる」 「ああ、君の言うことはもっとも……なんだがね」  会う度に言われ慣れた小言、それに対し男はまたかと苦笑を返す。  女の膝に頭を乗せたまま、しかめ面を崩さないその頬に触れた。 「しかし、こればかりはどうしても駄目だ。いや正直、何度も衝動に負けそうになってるんだがね。いざとなると、勝手に体が止まる」 「だからお前は意気地無しだと言うんだ。その体になって一体どれだけの間……」  まともに食事を摂っていない。  女は悲痛な面持ちで、ぼそりと呟いた。
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