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ツグミ、落ち着いて聞いて欲しい。
僕は、もう長くは生きられない。
いいんだ、自分のことはわかってる。
最後に、僕の望みを叶えるのを手伝って欲しい。
ツグミは兄上のことが好きだろ。
隠さないでいい。
僕も兄上が好きだからわかる。
ツグミが僕の世話をしてくれるようになってから、5年くらい経つね。僕に尽くしてくれてありがとう。
僕はまた体を抜け出して見てきたんだ。
第三皇子の祖父が隣国の力を借りて、謀叛を企てている。決行は陛下が外遊する来週だ。
ツグミ、薬師長にこう言うんだ。
昨日、夢で白髪の男に会った。
薬師長に伝えて欲しいと頼まれた。謀叛の計画があるから皇子に伝えて欲しい。左胸にアザがある男と言えば信じるだろう。
白髪で左胸にアザがある男とは僕の祖父、先代の皇帝だ。祖父と薬師長は幼馴染みで、このアザは一緒に遊んでいた薬師長を庇って怪我をしたときにできたそうだ。このアザのことは限られたものしか知らない。僕は祖父から聞いた。
ツグミがこの国に来る前に祖父は亡くなってるし、薬師長は信じると思う。
名前を騙っても祖父は怒らないよ。兄上のためだ。大丈夫。僕が黄泉の国で謝っておくよ。
無事謀叛を止められ、褒美をもらえることになったら、兄上の側にいたいと言うんだ。
このまま僕が死んだら、侵略された国の王子のツグミは、恐らく臣下に嫁ぐことになるだろう。
でも本当は兄上もツグミが好きなんだ。
だから、君の国を侵略して王宮で自害しようとした君を連れ帰った。兄上はツグミの国に留学していたときから、君が好きなんだ。
Ωの君は親の意向で臣下に嫁ぐ予定だったって聞いたよ。
ツグミ、この国では妃はαの女性しか認められていないけど、この功績でΩの男性のツグミでも妃になれるだろう。このことも祖父のお告げにしてもいい。兄上がなかなか結婚相手を決めなかったのは君がいたからだよ。
無事妃になれたら、一晩だけ僕にツグミの体を貸して欲しい。
僕は兄上に「僕だけを見て」そう言って、一晩だけ夢を見たい。
交渉成立?じゃあ、手を伸ばして。
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