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「お兄さんたち、仕事で移動中? ここにはどのくらいいる予定なの?」  翌日の昼、宿の近くの食堂でテーブルについたふたりに、料理を運んできた少女が笑いかけた。観光客など来ることのないこの街に、わざわざ滞在するよそ者が珍しいらしい。  香ばしい揚げ物の匂いと、客たちの笑い声。食材を調達するのも楽ではない状況のはずだが、手頃な値段でうまい料理を出す食堂は、周辺の住民らしき客で賑わっていた。その大半は、働き盛りの男たち。子どもや若い女の姿は見当たらない。 「しばらく、そこの宿で便利屋の真似事を」  カイがこたえると、 「知ってるわ。時計や鍵の修理もできるんでしょ? あたしの友だちが、指輪の石がぐらついてるのを直してほしいんだって。そんなのもできる?」  娘は身を乗り出して、ぽんぽんと言葉を重ねた。 「おやすい御用だ」  度重なる政府軍による攻撃で職人の多くがよそへ移ってしまった今、細かい作業のできる便利屋は、住民たちに歓迎されているらしい。 「これはサービス」  言葉と共に、湯気を立てるスープの皿が二つ、テーブルに置かれた。男の子が歓声をあげる。
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