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「放してよ!」  数日後、少し早いが夕飯にしようと宿を出たカイとトトの耳に、リェンの叫び声が飛び込んできた。 「なんだと? 逆らうなら、基地まで来てもらおうか」  下卑た笑い声があがる。数ブロック離れた食堂の前で、軍服を着た若い男が二人、少女の肩や腰に手をかけているのが見えた。 「買い出しに行って来ただけよ。武器なんて持ってるはずないじゃない!」 「なら、身体検査くらい問題ないわけだ」 「証拠を見せてもらおうか」  ひび割れた石造りの道路に散らばる、買い物かごと貴重な食材。  三人から少し離れた場所で、心配そうに様子をうかがっている警官は、兵士を相手に手を出しかねているようだ。 「……今日の飯は干し魚か? リェン」  かごを拾い上げたカイが、もみ合うリェンと兵士の後ろから声をかけた。  いつのまにか背後に立っていた長身の男に、若い兵士たちがぎょっとした顔で振り向く。  それにかまわず、 「俺、今日は肉食いてえ気分なんだよなあ。肉ないの? 肉」  いつになく饒舌にしゃべりながら、カイがリェンに近づいた。  追い抜きざまに、わずかな動きで少女の身体を兵士たちから引き離すと、カイはそのままリェンの肩を抱いて食堂に入る。後ろに続いたトトが、開け放していた店の扉をするりと閉めた。
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