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「仁美さん。備品整理終わりました」
「ありがとー!ねえ梶ちゃん、今東明さんと話してたんだけど、タピオカ飲みに行こうよ!」
「は?」
発注した備品を段ボールから出して裏の倉庫に片付けてから店先に戻ると、意味の分からない提案を受ける。楽しそうな仁美さんの隣には、花束を抱えて相変わらず屈託のない笑顔を見せる男がいた。
「(まだ居たのかこの人)」
2人を一瞥した後、地面に視線を落とす。葉っぱが数枚落ちているのに気付いて拾いながら「興味無いです」と温度の無い言葉を吐き出した。
「女子高生がタピオカに興味ないとかあるの…?」
先程のイケメンの時と同様、大袈裟によろけながらこめかみに手を当てる仁美さんに冷めた視線を送る。彼女の女子高生とやらの定義づけが全く分からない。
「タピオカ飲みに行くこと、タピるって言うんでしょ?」
そして隣の男も、此処までの流れを無視して新たに会話を繰り広げてくる。仁美さんが「東明さん、お詳しいですね!」なんて高い声で褒め称えていて、頭が痛くなってきた。
「…お2人でどうぞ」
私の返答に「カジカジは本当にツレない!!」と仁美さんが怒るのはもはや日常茶飯事なので、あまり何も思わないけれど、その隣の東明という男の眩しい笑顔は、何処か居心地が悪い。
「梶さんは、花が好き?」
さっきと同じだ。至って自然に作り出された会話の流れかのように軽く尋ねてくる。
「そうですね、好きです」
「僕も好きなんだ」
「……そうですか」
声のトーンまで、まるでお日様のよう。全てを包み込むような日差しが私のことも勝手に照らしてくるようで、必死に顔を背けた。
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