ⅳ.「恩師だけに捧げる本音」

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恐らく、これからも本人にはきっと言えない。 『恩師だけに捧げる本音』 ________ ____ 「…で?次は綾瀬の番だけど。好きなところは?」 「……」 「どうせお前はダメダメだから桔帆本人には言えないでしょ。 僕が代わりに聞いてキュンとしてあげるから。」 「…うざ。」 「言わないと、僕この論文書き上げないよ?」 「なんだこの教授。」 「はーやーく。」 「…挨拶。」 「ん?」 「俺とどんなに言い合いしても。 絶対、自分が出て行く時とか、俺を見送ったり出迎える時にちゃんと挨拶してくるとこが、まあ、」 「可愛いよね?めっちゃ可愛いんだよね?」 「うぜえ。」 「そのやりとり、永遠に僕は傍で見守っていたいなあ。」 「見守るってか、楽しんでんだろうが。」 「違うヨ?」 ______________ 「明日、職場近くまで迎えに行くから外で晩飯食うか」 と提案すると、桔帆は頷いて嬉しそうに微笑んだ。 多分待っている俺を見つけて「ただいま」と、どこか気恥ずかしそうに、でもちゃんと告げて駆け寄ってくる姿が見たいとか、そういうことも全て。 俺を"一番弟子だ"と言いながらも 常に揶揄ってくるのが、趣味みたいな。 いつだって眩しい笑顔を浮かべていた ただ1人の恩師だけが、知っている。 fin.
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