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目の前の鏡には自分が写っていなくてはいけないのに、映っていたのは短く黒い髪だが前髪は少し流した、涼しげな目もとの二十代くらいの若い男性の姿。しかも王子様のような恰好をしている。絵本で見るような、おとぎ話の国の王子様。金髪でまつ毛びーん、となっていて、やたらイケメンのやつだ。
赤い王子専用の衣装に身を纏った、目の前のイケメンが喋ったのだ!
頭に王冠も乗っているから、やっぱり王子様なの!?
『お前でない事は確かだな、と何度も言っているのだ。ちゃんと聞け、どあほう』
辛辣なお言葉を、鏡面からいただきました!!
そしてどあほう呼ばわり。
「な・・・・何なの、一体・・・・」
ああ、これは夢なんだ。ショックのあまり、飲めもしない缶チューハイの梅ソーダほろっとよい気分なんかを近所のコンビニに立ち寄って買ってきたから、きっと酔っぱらっているんだ。
『お前が俺に話しかけたんじゃないのか。応えてやったのに、態度が悪いな』
どっちが!
――ていうか、鏡が喋った!?
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