0人が本棚に入れています
本棚に追加
私の初恋は散々な物だった。
その頃の私は中学の三年生・・
両親が離婚し、父と母の家を交互に行き来しながら高校受験の勉強と称し友達と遊び回る毎日だった。
遊び回ると言っても大した事はしない。
放課後、繁華街の外れにあるゲームセンターの二階で同じように心の行き場のない者達と話をする程度・・
家に帰らなくても親はもう一人の家に居るものと思い心配も連絡もしない。
思春期の不安定でか弱い心は自分ではどうする事も出来ないのに、それを助けてくれる筈の親は自分達の心を優先し、体型だけ大人に見える娘に自分達の選択を理解させようとする。
そして両方の親には其々に別のパートナーがいた。
その日も放課後何人かで集まると、ゲームセンターの二階にあるジュークボックスの側で屯する。
古いジュークボックスからは聞き慣れない外国の音楽が流れ、それは十五才になったばかりの私達を少しだけ大人になったような錯覚に導いた。
私たちより幾つか年上の人達が誰がジュークボックスの話をする。
「昔は一曲100円でその頃のヒット曲が聞けたらしい」
「一曲100円って高くない?」
「携帯も音楽専用のモバイルも無い時代、此は若者の社交場みたいな場所だったらしい」
そうなんだ・・
そう思いながらジュークボックスの選曲メニューを見る。
殆ど知っている曲名は無かった。
「ごめん、良いかな?」
後ろから声がかけられた。
振り返ると私より少し年上男子学生がコインを手に私を見ている。
「あの・・
何か・・」
「え?
いや・・ジュークボックスを使いたいんだ。
すまないけど避けて貰えるかな?」
彼の答えに顔が赤くなる。
「あ・・
すみません」
そう答えて脇に避ける。
自分に何か用かと勘違いした事を悟られないように、側にいた友達に話しかけた。
彼はそんな私に気づかずジュークボックスにコインを入れ曲を撰んだ。
「あっこの曲、聴いたことある」
無意識に声が出た。
慌てて彼の方を見る。
彼は私の顔をちらっと見ながら曲に会わせるように身体を動かす。
私は直ぐに視線を彼から離し、また友達に話しかけた。
最初のコメントを投稿しよう!