決戦はショートケーキの日

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 えっと返した亜沙美に千春が左手で見せたのは自分のスマホだ。そこには電話番号の検索結果として、亜沙美が働くケーキショップが入る商業施設の代表番号が表示されている。そして右手で予約表を見せる。ラブくんの端午の節句を祝うホールケーキの予約表だ。予約表の電話番号とスマホの画面を見比べれば、同じ電話番号であることが分かる。  つまり、いたずらだ。 「……どうしましょう」  ケーキは出来上がっている。あとはお客様に渡して、代金を受領するだけだ。閉店時間まであと十分、お客様が来る様子はない。そもそも電話番号がでたらめなのだから、来る気もないのだろう。そうなるとホールケーキの分は損失になる。 「すいません」 「はい!」  ホールケーキの予約客かと振り返るも、そこにいたのは千春いわく社畜の彼だ。世間はゴールデンウィークだというのに、スーツを着て閉店間際に現れるあたりは社畜説を否定できない。 「ラブくんの予約されたお客様ですか」  美魔女で通っている千春がカウンター越しに彼に詰め寄る。その据わった目は美魔女ではなく魔女だ。 「……またドタキャンされたんですか」
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