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朝の予感は間違っていなかった。バイトを終えて駅に向かおうとしたところでばったり彼に会った。この近くで働いているか住んでいるかだろうとは思っていたが、会うとしたら店内だろうと思っていただけに、とっさに出た言葉がそれだ。
怪訝な顔をされて、私服姿であることに気付き身元を説明しようとすると相手が口を開く。
「ドタキャンされたケーキ屋の」
「アルバイトの中島亜沙美です」
「なぜ?」
一礼した亜沙美に冷たい声が降ってくる。顔をあげれば、彼は亜沙美の相手をするのが面倒くさそうな顔をしている。
「弁護士だと言った途端に寄ってくる女がいるが、それと同じか」
「違います」
確かに彼が弁護士だと知った千春はこの一ヶ月、わかりやすいほど彼を狙っている。亜沙美は千春にライバル視され、以前のように親しく話すことはなくなってしまった。
「一人でホールケーキ食べるくらい、ケーキ好きですよね。私の趣味はスイーツ作りで、ホールケーキも作れます。味にうるさい女友達のお墨付きです。いつでもケーキが食べれますよ。カロリーも気にしますし、お得ですよ」
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