だからあなたを好きになりました。【後ろの理解者・ep.8】

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だからあなたを好きになりました。【後ろの理解者・ep.8】

 ジメジメと降りしきる雨が体温を奪う。こんな梅雨寒の日でも、神社の仕事は山積みだ。恐神(おそかみ)(えにし)は、本職である巫女の装束(ユニフォーム)に身を包み、身長よりも長い竹箒を抱えて境内の掃除をしていた。 「あーあ。つまんない日…」  せっかくの日曜日なのに冴えない空模様に加え、愛しの紫音が今日は不在らしいと聞いたせいもあってか、縁は自らの嫌な過去を思い出していた。  実家(神社)の御神体の力を授かって生まれた縁には、子どもの頃から不思議な力が宿っている。中でも「視える」能力は、おそらく生まれた時から身についていたものだ。 「幼稚園の友達も霊魂も、区別なんてできなかったもんね」  縁は友達と付き合うように、ごく日常的に霊と会話をして遊んでいたのだ。  神職にある両親は、縁の神秘的な力を「巫女としての才能」として喜んでいるフシもあったが、周囲は穏便にはいかない。1人で喋って喜ぶ(ように見える)縁に、同級生の親たちは警戒し、じきに「あの子と遊んじゃダメよ」となる。学年が上がるごとに周囲から浮き始めて、やがて縁は孤立した。  とはいえ縁は、根っからの愛らしく人懐っこい性格に加え、底知れぬ能力を恐れられていたので、深刻ないじめには至らなかった。だが小学5年生の頃、事件は起きる。気味悪がらずに付き合ってくれていた親友が、(縁の代わりに)いじめに遭うようになったのだ。 「あの時私は、簡単に人を殺せるんだってわかっちゃったんだ」
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