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「何があっても、パパはいつでもリナの味方だよ」
リナを抱いて湯船の中でゆらゆら揺れると、まだ両手で事足りてたリナを思い出す。
桃のような柔肌を髭で傷つけないよう、頭の上に顎を乗せて、目を閉じた。俺の後頭部や胸の辺りに、何かがしゅわしゅわと立ち昇る。高揚感、いや充実感か。どちらともしっくりこない。なんと表現していいのか分からない。
幼い我が子を抱きしめているのに、こちらの方が抱きしめられているような安心感。
……ああ、そうだ。しばらく考えて、この感情の答えを見つけた。
これが、「慈しむ」なのだと。
□□□□
週明けの月曜日、午後の業務が始まる前に妻から連絡が入った。仕事のトラブルでリナのお迎えに間に合いそうにないから、あなたにお願い出来ないかといった内容だった。
妻に「了解」と短く返信し、午後の段取りを再確認する。
俺が出勤する時、リナは寝ていた。今朝の機嫌はどうだったのだろう。例の“ゆうた君”のせいで幼稚園に行くのを渋ったりしていなかっただろうか。またあの薄桃色のほっぺを膨らましていないだろうか。
そんな事を、リナを幼稚園内で見つけるまでずっと考えていた。
五時少し過ぎに幼稚園に到着すると、園内は延長保育の子供たちだけになっていた。園内で見かける男の子が全部ゆうた君かもしれないとチェックしながら、リナのいるたんぽぽ組に向かう。
上原リナの父です、と担任の先生に伝えている途中で、リナが俺に気付いた。手にしていた積み木を離し、駆け足で自分の荷物を取りに行く。その顔は帰ることが出来る喜びに溢れていた。
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