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そんなある日、彼女一人と、僕を含めて三人の男子で映画を見た帰り道。
大通りを歩いていると、突然車のブレーキ音があたりに響いた。
びっくりして音のした方を振り向くと、一台の軽自動車と、その前には猫が一匹、地面に横たわっていた。
その猫はぐったりとしているようだったけど、尻尾が動いていて、まだ息はあるように見えた。
軽自動車に乗っていたのはガラの悪そうなカップルで、そのまま猫をまたいで走り去ろうとしていたけれど、その前にまっさきに飛び出していったのが彼女だった。
「待ってください、まだ猫がいるんですよ!」
両手を広げて軽自動車の前に立ち、走り去ろうとするのを阻止する。
周りにいる僕らは突然の出来事に驚いて、とっさに動けなかったけど、二人は慌てて後から車道に出て一人は彼女の代わりに自動車の前に立ち、もう一人は猫を抱き上げようとする。
ただ、彼は口から血を流して苦しんでいる猫にひるんで手が出せないようだった。
僕はただ一人、情けないことにその場から動けずにいた。
何か出来ることはないのか、思いついたのは近くの動物病院をスマホで探すことだった。
その間に、彼女は臆することなく猫を抱き上げると、走って歩道に引き返してくる。
三人が揃って歩道に戻ると、軽自動車はイラついたようにクラクションを派手に鳴らしながら走り去っていった。
彼女は不安な表情で、抱きかかえた猫を見つめている。
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