0人が本棚に入れています
本棚に追加
傷ついた猫を抱きかかえている彼女に、心配そうに一人が声をかける。
「どうなんだ、猫。まだ生きてるか?」
「うん、まだ生きてるみたいだけど、早く手当てしてあげないと」
僕は三人におずおずと、声をかける。
「あの、この2つ先の交差点の角に動物病院があるみたいなんだけど…」
言って動物病院のある方向を指さす。
聞くが早いか彼女は駆け出していた。彼女を庇うよう寄り添いながら、他の二人もついて行く。
僕はここでも出遅れていた。後から追って走り出す。
運の悪いことに、辿り着いた動物病院は休診日で閉まっていた。慌てていたから、僕も診療日までは調べ切れていなかった。
「なんだよ、閉まってるじゃねえか」
一人が僕に向かって思わず声を荒げる。
彼女を見ると、猫を抱きかかえたまま、意を決したように病院のドアを叩いて呼びかけ始めた。
「お願いします!開けてください。自動車に轢かれた猫がいるんです!」
他の二人も彼女の手助けをしてドアを叩く。「お願いします!誰かいませんか!」
僕も一緒に呼びかけようかと思ったけど、すでに三人でドアの前はいっぱいだった。
スマホには病院のホームページが表示したままになっていることに気が付き、僕はそのページから電話番号に飛んで、そのまま電話をかける。
スマホを耳に当てると、呼び出し音が何度もなっているけど、電話には誰も出ない。
誰もいないのか…。あきらめかけた時、病院のドアがかちゃりと開いた。
最初のコメントを投稿しよう!