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愛に理由なんてないというけれど。
それでも僕は彼女を選んだ理由をいくつも挙げられる。
何もないところでつまづいちゃうところとか。
構おうとした野良猫に逃げられて涙目になっちゃうところとか。
お気に入りのピンクの傘をうっかり電車に忘れてきちゃうところとか。
そんな様子だから、いつも横で見ていてハラハラしていた。
僕が守ってあげなきゃと思ったんだ。
でもそんな彼女だから、周りの他の男子からも好意を向けられていて、誰とでも気さくに話せるから、君の周りには男女問わずにいつも人の輪ができていた。
僕はいつもその輪から少しはずれて歩いていた。
周りの男子は誰もが僕より背が高くて、力もあって、たぶん僕よりずっと彼女を守るのに適している。
それでも諦めきれずに、僕はその輪から離れられずにいた。
そんなある日のこと―――。
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