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彼女を見つけたのは、私のほうだった。
あの日、暗い蔵のなかに隠れていた。その容姿から、異国の人だとわかった。家の商いの関係で、いろいろなところから荷物が届く。だから、どこかで紛れ込んだ密航者なのだろうと思った。
しかし、多少薄汚れてはいても、気高さというか、存在の特別感というのか、目を離せない何かがあって、私は彼女を匿うことを決めたのだ。
あの時の彼女から受けた印象は、この後の長い付き合いのなかでも褪せてはいない。
私は間違っていなかった。
滅多に過去を振り返ることはないけれど、あの時、あるいは、あれからの日々を思い出した時、結論はいつもそこに落ち着く。
あなたを選んだことは、間違っていなかった、と。
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