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強いものいじめ
今日もこの魔法学校では優秀な魔法使いを目指して、みんな頑張っています。
今回はあまりえっちじゃないお話です。
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ユイオ君は困っていました。最近、イエラさんにしつこくお願いされているのです。
今日も放課後に空き教室に呼び出されていました。
(なんで俺なんか選ぶんだよ……)
イエラさんはついにはスカートを捲り上げます。
「好きなだけ見ていいよ……だから」
ユイオ君はつまらなそうに鼻を掻いています。というより鼻をほじっています。
「はみ出てんぞ」
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さて、ここからはどうして冒頭のような状況になっているのか? の、お話です。
イエラさんは帰国子女で見た目も言動も目立ってしまいます。
コミュニケーションがうまく取れないで過ごすうちに、いじめられるようになっていました。
性格も暗くなり表情もうつろになっていくと、悪意を向けようとする者以外だれも声をかけようとはしなくなりました。
「そ、そんなに持ってこられないよ……」
イエラさんは女子3人に囲まれ、指定された買い物リストを見ながらうつむいています。
「はぁ? ちょっと何言ってんだか聞こえないんだけど?」
「持ちきれないんなら友だちに手伝ってもらえばいいじゃんか!」
「フフ、やめなって、こいつに友達なんかいるわけないじゃん」
イエラさんは泣き出しました。
(なんで、なんで、私だけなの……)
イエラさんは綺麗な長い赤髪に小さめの顔、大きめの青い瞳でとても可愛らしい生徒です。いじめが始まったころは助け舟を出してくれる人もいました。ですが、いじめている3人の親族がそれなりの地位のある人たちだったので、あまり関わらない方がいい、と無関心を装うようになっていきました。
イエラさんは窓際で帰り支度をしている小柄な男子を指さしました。
「じゃ、じゃぁユイオ君に手伝ってもらう」
3人は窓際を見ます。
「うん? 誰だっけ?」
「うーん?」
「あんな奴いたっけ?」
ユイオ君はびっくりです。
(あれ、おい、スキル効いてない?)
ユイオ君は深呼吸して身だしなみを整え、そーっと席を離れます。
「ユイオ君!」
イエラさんはツカツカと歩み寄ってユイオ君の腕をつかみました。
(うわ、やべぇ、マジでスキル効いてねぇ!)
「な、なんだよ」
ほとんどの生徒はいくつかのスキルを持っています。先天的なものと後天的なもの。
ユイオ君は普段から頑張って身に着けた『静穏行動』と『容姿隠蔽』のスキルを意識して過ごしています。いままで教師に対しても有効であったのに、いまはなぜか効果が出ていません。
ユイオ君が不思議がっていると、イエラさんは泣いた眼をこすると睨んで言いました。
「私、まえからユイオ君のこと気づいてたから。私、『探知』スキル得意だから。いっつも、ってゆうか一度も助けようとしてくれなかったでしょ、今日は……」
以前からイエラさんはユイオ君が気になっていました。良い意味ではなく、むしろ逆の意味かもしれません。魔力量も少なく友だちもいるように見えないユイオ君なら、きっと自分の代わりにいじめのターゲットになるんじゃないか……、そんな風に考えていたのです。
「……荷物持ち、手伝ってくれるだけでいいから」
(マジかよ、巻き込みかよ……)
イエラさんの震えが、掴まれた腕からユイオ君に伝わっていきます。
「……そんだけならいいけど、嫌だけど、まぁいいけど」
ユイオ君は煮え切らないように仕方なく了承しました。
ケラケラと笑う3人を後に2人は教室を出ました。
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買い物を終えて2人は指定された場所にゆっくりと歩いていました。
「なぁ、お前さ、こんなのやめりゃいいじゃん」
両手いっぱいの荷物の中には何冊かのエロ本や男物の下着も入っています。とても女子1人で買いに行けるものではありません。
「校長にチクったり、家に引きこもったり、いろいろ逃げることできんじゃん。そもそも通報案件だろ、こんなイジメ」
イエラさんは足元を見ながら答えます。
「そんなことできるわけないよ。お父さん、お母さん心配しちゃうもん」
「……そんなもんかねぇ」
その後は何を話すともなく指定された場所に着きました。解体の決まっている旧校舎の地下教室です。
ユイオ君は旧校舎に入る前に反射魔法を詠唱しています。何もせずに行こうとするイエラさんを見て声をかけます。
「リフレクトくらい使っとけよ」
イエラさんは足を止めずに答えます。
「あっち3人だよ、魔力総量で勝てるわけないじゃん、無駄なんだよ、そうゆうの」
ユイオ君は、そうかよっと首を横に振ってついていきました。
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イエラさんは地下教室の扉を開けます。
「買い物、ここに置いておくから、私たち帰るね」
イエラさんが言うと、ユイオ君は買い物袋を教壇の端に置くと、片手をあげて、んじゃ、と教室を出ようとしました。
と、急に教室の扉がバンっと閉まりました!
ユイオ君は面倒くさそうに振り返ります。
(先輩なら、どうすんのかなぁ、こんな場合)
「おい、誰が帰っていいって言ったよ?」
3人は教壇まで来ると買い物袋の中身を確かめます。
イエラさんは扉のそばでうつむいて震えています。
「せっかくお前のために買ってやったんだから、着替えてみせるのが礼儀だろ。ちゃんと写メ取って、変態で~すってみんなに送ってやるからさ」
買ってやった、といってもお金はイエラさんが出しています。
はいコレ、と1人がイエラさんに男性用ブリーフをパッケージから出して渡します。
イエラさんが躊躇っていると他の2人が手を押さえます。
「おい、お前、ユイオだっけ? 履き替えさせてやれよ」
(はぁ?)
ユイオ君は不機嫌な表情を隠さずに両手を伸ばします。
イエラさんではなく、イエラさんを押さえている1人のスカートに手を入れてパンツを下げました。
ちょ、おま、っと、パンツを下げられた1人がイエラさんから手を放します。
「てめぇ、ふざけんなよっ!」
慌ててパンツを上げると、すかさずユイオ君の胸ぐらをつかんで前後に揺さぶります。ユイオ君はイエラさんと変わらないくらい小柄なので本当によく揺れます。
「言われたとおりしたじゃんかよ」
ユイオ君は揺さぶられるまま天井を見ています。
(あー心底どうでもいいわー)
ちっ、と舌打ちが聞こえるとユイオ君は床に引き倒されていました。
すぐにユイオ君は蹴り上げられます。イエラさんを押さえていた1人も加わって2人で蹴っては起こし、起こしては殴って、ユイオ君を痛めつけていました。
ユイオ君は痛がってもがきながらも、呼吸を落ち着けるたびに口元に笑みを浮かべていました。
面白そうに見ていた1人が、そんなユイオ君の口元に気づきました。
「おやおや? こいつドМじゃねえ? はは、痛めつけられて笑ってやがる」
イエラさんは耳をふさいで目を精一杯閉じて身体を丸めていましたが、薄目を開けてユイオ君を見てみます。確かに苦しそうな表情です。でも確かに口元は笑っていました。
3人は、オイ、こら、お前ドМか? オラ、とユイオ君を蹴とばしています。
見かねてイエラさんが間に割って入ります。
「もう、やめてあげてよ!」
「はぁ? コイツが舐めたことするから指導してやってるんだろうが!」
3人は蹴飛ばし続けます。
そのうち1人が動きを止め、何かを思いついたように言いました。
「そうだ、こいつらに、させちまわない?」
「なにを?」
「いや、せっかく着替えもあるわけだし、ほら、庇い合う男と女って、映画とかでも結ばれちゃうもんじゃん」
3人は不敵な笑みを浮かべます。
さっそく1人が早口で火炎魔法を詠唱しイエラさんの制服を燃やします。
熱い、熱いっといって手で炎を払おうとするイエラさん。けれど、あっという間に下着姿にさせられていました。
もう1人も詠唱しユイオ君の制服を燃やそうとします。手のひらに炎を湛えた瞬間、あちっ、と炎を消しました。
ユイオ君の反射魔法が効いたのです。
「おいこのチビ、リフレクトなんか使ってるよ」
言いながらユイオ君を蹴倒すと、魔力の強弱が色で判別できるペンダントをユイオ君にかざして見ます。
「うーん、残念だけどお前、ほとんどカス並みの魔力量じゃん」
今度は3人がかりで詠唱しユイオ君に炎を放ちました。
当然のようにユイオ君のリフレクト障壁は通過されます。ユイオ君は転がりながら火を消そうとしましたが上着はほとんど燃やされていました。
うずくまっているイエラさんのところまで引きずられるユイオ君は息も絶え絶えでした。
引きずられる先にあるイエラさんの震える上半身。たくさんある魔法傷がユイオ君の目に入ります。
おら、よっと、うずくまるイエラさんの上にユイオ君を放ると、3人は囃し立てます。
「ほら、遠慮なくやっちゃえやっちゃえ」
3人は楽しそうに2人を囲みます。
イエラさんは小柄とはいえ男が覆いかぶさっているせいもあり、怖さから失禁してしまいました。
それを3人が嘲っていると、ユイオ君が怒鳴ります。
「おーーーーー!」
3人は手を叩いていっそう笑うと、ユイオ君の背中を何度も踏みつけました。
ユイオ君は大きく笑い出しました。
3人もつられて大笑いします。
「おいおい、こいつ、やっぱ真性のМだわ、ははっ」
ユイオ君は呼吸を整えながらイエラさんに小さく耳打ちします。
「そろそろ、だ、大丈、夫。もう、終わりにしてやるから」
自分以外みんな笑っている現状にわけがわからないイエラさんは、そっとユイオ君を振り返ります。
光っていました。ユイオ君の瞳が、そして全身の輪郭が、赤く光っていました。
赤く光るユイオ君をみて3人は笑うのをやめて身構えます。
ユイオ君は立ち上がるとゆっくりと振り返ります。
ユイオ君の尋常じゃない様子に1人が火炎魔法を放ちます。が、放つと同時に自分が炎に包まれてしましました。
慌てて炎を消してあげようとする2人。
消火すると1人が回復魔法をかけてあげています。
回復魔法を施されながら、もう一度ペンダントをユイオ君に向けてかざすと、色が最大値を示す赤になったかと思った瞬間、バリンとペンダントは砕けてしまいました。簡易測定用なので高精度のアイテムではないものの、ユイオ君の魔力量が急に増大したことだけは間違いありません。
3人は反射魔法を詠唱しようとしますが、なかなか詠唱に魔力が込められません。大きめの魔法を使っていっきに魔力を減らしてしまったときのように、まったく魔力がまとめられないのです。
これはユイオ君の先天的なスキルのせいでした。生命力が著しく低下すると『アドレナリンラッシュ』と『МPドレイン』が発動するのです。
3人は身を寄せ合っています。ようやく気付いたようです。
「やばいよ、こいつ、パーク発動してんじゃん」
ユイオ君は満面の笑みを浮かべながら3人に近づきます。
「く、くっ来んな、こっち来んなよっ!」
ユイオ君は、おっと、ごめんよと後ろに下がるそぶりを見せると、冗談、と、また笑みをたたえて近づいていきます。
1人が黒板消しを投げつけるとユイオ君の足に当たりました。
「そうだ、魔法はだめでも、物理攻撃なら……」
1人が立ち上がってユイオ君の頭に椅子を振りかざします。
が、片手で軽く椅子を掴まれてしまいました。
「俺がチビだから倒せると思った?」
ざーんねん、と、掴んだ椅子を3人に投げつけます。ゴチン、と1人の頭にぶつかりました。
痛い、痛いと泣き始める1人。
「なぁ、おまえらこれまでイエラに何してきたの? あの身体の傷、まともな魔法じゃないよな、それも服で隠れる部分だけとか、陰湿過ぎじゃね?」
机に隠れるように後ずさる3人。まるで落書きをするようにいろいろな魔法をイエラさんにかけていたなんて、この状況で白状できません。
ユイオ君が机をガンっと思い切り蹴ると、3人は腰をついている床に熱い液体を感じました。そろって失禁してしまっていました。
ごめんなさい、ゴメンナサイ、ゴメンナサイっ! 3人は顔の前に手を伸ばして振りながら目をつむって声を上げます。
「いやいやいやいやいや、イエラはきっと許すかもしれないけど、俺、許さないから。さっきも、けーっこう熱かったし、すんげぇ痛かったんだよねぇ」
火炎魔法を詠唱するユイオ君。両手に炎を湛えると、自在に操って3人のそばでドリブルするように何度も炎を近づけます。何度も消せる程度に制服を燃やします。都度手をパタつかせて慌てて火を消す3人。
リフレクトで制服をほとんど燃やされている1人は四つん這いになって扉から逃げようとします。
「おい、臭ぇケツこっちに向けてんじゃねえよ」
ユイオ君が下着越しに尻を踏みつけると、べち、っと床に突っ伏して気絶してしまいました。
残る2人も、もはやただ泣いているだけでした。
ユイオ君は真っ赤な瞳のまま2人を見下ろして、面白そうに言います。
「大きな声出しても誰も来ないからこんなところ指定したんだろ? でもさ、もしかしたらさ、大声出したら誰か来てくれるんじゃね? 万が一の可能性、ワンチャンあるかもよ、誰かが助けてくれるかも! ヒーロー登場!っとか!」
その場でしゃがみ、ほら、叫んでみろよ、と1人の顎をくいっと上にあげます。
2人とも大声で助けを呼んでみますが、周囲には自分たちの荒い息遣いしか聞こえません。
ユイオ君も両耳に手をあて目をつむって耳を澄まします。
「あは、やっぱり誰も来ないね」
ユイオ君は続けます。
「イエラもさ、最初は何度も何度も、わずかな可能性にすがって助けを求めたんじゃないかなぁ。ま。その場にいなかったからわかんないけどね」
あー、面白い、と立ち上がると、ユイオ君は火炎魔法を詠唱し始めます。
「お前らも身体に魔法傷つけてあげよっか、大丈夫、どうせ服で隠れる部分だし」
そぅれ、と特大の炎を両手でつくると3人に振り降ろしました。
「だめ!」
イエラさんが3人に覆いかぶさるように割って入ってきました。
「ユイオ君はそんなことしちゃダメ!」
魔法傷だらけの小さな背中が目に入ります。
ユイオ君は慌てて炎を扉の方に逸らします。
ボンっと音立てると扉は一瞬で燃え尽きてしまいました。
少し間が開くと、つまんねぇのー、とユイオ君は地下教室を出ていきます。
去り際、低い声で3人に言いました。
「また誰かをイジメてくれよ、そしたら俺も心置きなくお前たちをイジメてやれるから。俺、家族いねぇし、お前らの親の地位とか関係ねぇから。心置きなく、何度でも、お前たちをイジメてやるから」
イエラさんは教室のカーテンを引っ張って外し、1枚は自分で羽織って、残りは3人に渡してユイオ君を追いかけて教室を出ていきました。
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イエラさんがユイオ君を追いかけて旧校舎から出てくると、ユイオ君はしゃがみ込んで何かをしています。
「なに……してるの?」
ユイオ君は詠唱しながら手のひらに乗っているマジックボールを見せました。
「マジックボール?」
詠唱を終えるとユイオ君が答えます。
「そうだよ」
「あれが発動するとその場の魔力吸い取って魔力ギンギンになるくせに、1時間くらいで魔力使い切らないとすぐ元の魔力量に戻っちゃうからな。もったいないだろ」
ユイオ君はいちばん小さいマジックボールをイエラさんに渡しました。
「これ、あげる。持っとけよ」
「いいの? でも、何の魔法込めたの?」
見上げるイエラさん。
え? リフレクトだけど、とズボンの皺をはたきながらユイオ君は答えました。
「俺も悪かったな、いままで見ないフリしてきて……同罪だよなアイツらと……」
「うんう。ありがと。お守りにする」
イエラさんは小さなマジックボールを両手で包みました。
「着替えたら、とっとと帰ろうぜ」
ユイオ君はスタスタと新校舎に向かって歩き出しました。
イエラさんもカーテンを引きずりながら、遅れないように後ろを着いていきました。
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それからイエラさんは見違えるように明るい性格と生活を取り戻しました。心の暗い部分は消せないものの、それをかき消そうとするかのように新しい目標に向かって頑張っていました。
学期末の『スキルアップ講習(総合)』は任意参加です。あらかじめペアで申し込むこともできますし、個人で申し込んでも学校がペアを選定してくれます。
講習で出される課題を達成するといくつかの特典がもらえます。
でも、イエラさんはそれらの特典が欲しいのではありませんでした。
1位になれば写真つき記事として広報に掲載されることになっており、なんとしても参加して1位になりたかったのです。
お父さんお母さんに喜んでもらいたかったのです。
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そして、ここからが冒頭のお話になります。
「はみ出てんぞ」
イエラさんは赤面しました。
「く、しょ、処理しとるわい!」
「しとるわい、って…。そっちじゃなくて貝の方だよ」
慌ててスカートを下ろすイエラさん。
「出てるわけねぇでしょ!」
(ねぇでしょ、って……)
ユイオ君はなんだかおもしろくなって吹き出してしまいました。
「からかわないでよ! ねぇ、一緒にペア組んでよ! もうっ、男子って”本当は”こうゆうの好きなんでしょ!」
ユイオ君は面倒くさそうに答えます。
「いや、ほんとゴメン、なんで俺なんか選ぶんだよ。ほんとに女の子に興味ないんだわ、今度の講習は単位足りてるし参加する気ないもん」
それに、と言葉を続けるユイオ君。
「俺が、嫌そうな顔してパンツ見せられて喜ぶ変態に見えるのか?」
「それは、……見えないけど、でも、ネットの知恵袋でみんな、こうゆうことされたら一生ついていくとか回答してくれていたもん」
ユイオ君はびっくりです。
「知恵袋って! そういうことは今度からお祖母ちゃんに相談してごらん! それに一生俺についていかせる気なの!?」
そうです、最近分かったのですがユイオ君は女性に興味がないのです。好きな人がいるか訊ねると、天パーに丸メガネの気持ち悪い男の先輩の名前を挙げたくらいです。イエラさんからすれば蓼食う虫にもほどがありました。
イエラさんは泣きそうなのか怒りだしそうなのか体を震わせながらスマホを取り出して画像を表示させます。
そこにはうなじからお尻までの白い身体が映っていました。
うひょ、っとユイオ君は素早くスマホを取り上げると拡大して見始めました。
「うわ、誰これ? 盗撮? 悪い人だねぇイエラさぁん」
「……ペアなってくれたら正面から撮ってきてあげる」
ユイオ君はスっと手を伸ばしイエラさんと握手しました。
「交渉成立だな。で、これ誰?」
「教えない! なんで私じゃだめで、そっちならいいのっ!? ふつう、私の方が良くない!?」
ちょっと涙をにじませながらイエラさんは真っ赤な顔で言いました。イエラさんは悔しかったのです。
……スマホに表示させた綺麗な背中は、弟の後ろ姿だったのです。
ユイオ君はスマホを操作してその画像を自分のスマホ宛てに送り、イエラさんに返しました。
「だって、お前の身体、ずっとイジメられてたから傷だらけじゃん」
イエラさんの顔から表情が消えていきます。いじめられていた毎日が頭をよぎったのです。
続けてユイオ君は言いました。
「まだキレイに治ってないんだろ、早く治せよ。なんつうか、俺ほどじゃないにしろ、せっかくお前……可愛いんだからさ」
イエラさんは2回ほどむせぶと、睫毛で支えきれなくなった涙がいっきに頬にあふれました。
「もう、ばか、そうゆうとこだよ……」
悔しくて滲ませた涙が、嬉しくてこぼれ落ちていきます。
きっとイエラさんはユイオ君のことが好きになっていたのでしょうね。
ユイオ君は教室の戸に手をかけて振り返らずに言いました。
「それと、まだその体型じゃゴージャスな下着は似合わないと思――」
バシッ――!
言い終わる前に、ユイオ君の後頭部にイエラさんの上履きが直撃していました。
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結局、講習に参加した2人ですが、そのお話はいずれ、また。
今日もこの魔法学校では泣いたり笑ったりしながら、みんな頑張っています。
(おしまい)
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