再会した二人

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 背後の席にいたのは一人で座っている女性だった。  彼女もまた、コーヒーカップを持ち上げたまま目を見開いて静止している。 「……ベロニカ姫?」 「貴方……フリッツ……フリッツなのね……」  ふむ……だれやねん。 「ああ、ベロニカ姫……お会いしとうございました」  そう言いながら泰雅はごく自然に彼女の向かいに腰を下ろす。 「フリッツ……私もよ。この日がどんなに待ち遠しかった事か……。私が軽率だったために貴方の命を奪ってしまったあの日から……」  え、ベロニカ何したの?  ていうか、死の原因作った相手と会いたがってたの?  「いえ、良いのです姫。私は貴方の想いに気付いていました。気付いていながら、自分の心を殺して貴方の望まぬ結婚を勧めようとした……。私はその報いを受けたにすぎません」 「そんな……貴方はただ自分の仕事をしただけ。悪いのは自分の立場を弁えなかった私です。あの時、私がきちんと自制できていれば……。本当にごめんなさい」 「姫……。いえ、ベロニカ。もう良いのです。私を殺したのは騎士団長なのですから」 「いいえ、私は貴方に謝らなければいけないのです。あの日、私は騎士団長にそそのかされ、貴方の元へと行ったのです」 「何ですって!?」  ほんと、何言ってんでしょうね。  店内の視線を集めちゃってる事に気付いているかな?   俺はそろそろ他人の振りをして聞き耳だけ立てていていいかな? 「捕らえられる貴方を見ながら、私は何もできなかった。お父様にも懇願いたしましたが、火に油を注ぐばかり……。本当に私は愚かで無力だった……」 「そんな、ご自分を責めないでくださいベロニカ。私達はこうして再会できたでは無いですか」 「そうですが……私は貴方の隣に立つ資格などないのです。貴方を探していたのも詫びたい一心からでした。今日、こうして謝る事が出来て、私は満足です」  なんかイスの動く音。けど、すかさずもう一つイスの動く音が聞こえた。  彼女が立ち去ろうとして、泰雅が慌てて引き留めたってところか。
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