4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「待ってくださいベロニカ。行かないで」
「でも、私は貴方が死ぬ原因を作った女ですよ?」
「そんなこと、どうだって良いのです。私の心は貴方だけの物なのです。今あなたに去られたら、この心をどこに持って行けばいいのですか?」
「ああ、フリッツ……」
「ベロニカ……愛しています。ようやく言えた」
「フリッツ。私もです。私も貴方を愛しています」
軽く振り返ると、二人はがっちり抱きしめ合っていた。
俺は再び二人から視線を外した。
背後からの気配はアツアツなのに、コーヒーは冷たくなっていた。
「もう私達の中を拒むものはありませんベロニカ」
「フリッツ……私でよろしいのですか?」
「貴方でなければだめなのです……」
「ああ、フリッツ……」
店内が微かにどよめいた。
ちょっとだけ振り返ると、なんかキスしてる?
こいつらマジか……。
俺は慌てて顔の位置を戻して、心の中で呟いた。
アイツらは他人、アイツらは他人、アイツらは他人。
「行きましょう、フリッツ」
「ええ、貴方とならどこまでも」
二人はしっかりと寄り添い合いながら、そのまま店を出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!