再会した二人

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 静まり返る店内。だが、すぐにとんでもないざわつきが始まった。  だよね、そりゃそうですよね。  退散だ、退散。  そう言えば、アイツケーキセットの金、置いて行ってないじゃん。  今度会った時、利子付きで回収してやる。  俺はレジへ行くべく伝票を手に立ち上がった。 「あのぅ……」  その背後からかけられる声に振り返ると、黒髪をボブカットにした可愛い店員さんが俺を見ていた。 「は……はい?」 「お連れ様の伝票……お忘れですよ」 「お連れ様……」  あの女か!! べ……ベロニカぁぁぁぁ。 「いや、アイツは……」  違うんです、と主張しようとして、俺に店内の視線が集中している事に気付いた。  そりゃそうだよな。出て行った片割れと仲良さげに入店したの俺だもんな。  ここで黙って伝票を受け取ってしまう俺の情けなさよ。  レジへ行くまでに思わずその伝票に目を通してしまった。姫はどれだけお上品なもん食ってんですか?  ……ピザに和風パスタ? ウィンナー珈琲? ケーキまで?  何がっつり食ってんだあのベロニカはよぉ。  喫茶店ではなかなか到達しない合計金額に、俺は黙ってクレジットカードを差し出した。  暗証番号を打ち込みながら、レジのお姉さんに俺はつい尋ねてしまった。 「前世、姫だったりします?」 「すみません、私そう言うのはちょっと……」  苦笑いでばっさり。俺もですよねー、と返すので精いっぱい。  物理的にも精神的にも懐に傷をつけられ、俺は二度とこの店に来ない事を誓わざるを得なかった。ていうか、しばらくこの界隈を歩くのも嫌だ。
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