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「ん……じゃあ、頼もうかな。始まりの町に送ってくれる?」
『ええ、お安いご用よ。手土産、楽しみにしてるわね。』
足元の水が、渦を巻きながら持ち上がる。繭のようにshYnoの体を水流が包み込む。
水面が平静を取り戻したとき、そこには水の精以外の動くものはなかった。
「……まあ、水場って言ってたしこうなるか。」
「おや、奇遇だなshYno嬢。拙の作った装備、活用してくれているようで何よりだ。しかし、死に戻りというわけでは無さそうだが、何故噴水で濡れ鼠に?」
視界が切り替わった直後、ずぶ濡れで噴水の中に立っていたshYno。そこに声をかけてきた中性的な影に鷹揚に応じる。
「あ、maliceさんその節はどうも。動きやすくて助かってるよ。いやー、東で蛙魔人相手に暴れてたら色々あって。」
「ふむ……蛙魔人というと、対虐殺はたしか巨蛙魔人だったかな。……あの鈍間に、君が遅れを取るとは思わんが?」
「いや、水蛙精魔って名乗ってた。」
「ほう?……もしやshYno嬢、近くにかなり背の高いマングローブに似た木本がなかったかね?」
「ん?うん、たしかあったよ。ちょっと離れたところに小さな社みたいなのと水門もあった。」
「…………shYno嬢、非常に言いにくいのだがな。」
「何?」
「君が相手にしていたそいつらは、蛙魔人ではない。それの上位種、蛙魔人兵だ。」
「え。……じゃあ何、本来の蛙魔人ってもっと脆いの?」
「口ぶりで予想はしていたがやはり蹂躙していたか。その腰物の試しものかね?」
「そだよ。魔黒檀の木刀。」
「……良く倒せたな、黒檀上魔樹霊にしろ蛙魔人兵にしろ。」
「まあ、最終的にはごり押しで?」
「……始まりの町からあまり離れていないとは思えないほど強いな、貴女は。」
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