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prorogue
しゃりぃん、ごとり。
金属が擦れる甲高い音のあとに、重いものが転がり落ちる音がする。
得物と思われる刀を鞘に納める痩せ気味の、道化の面を着けた少女の後ろで、崩れ落ちる体と転がる生首。
「…ああ、楽しいなぁ。これが、PK…ふふふ、ふふふふっ、くふ………!」
俯き加減になり、空気が漏れるような音を繰り返しこぼす少女の後ろで、頭を失い転がる死体が、光に変わって跡形もなく消えた。
「最近の技術って凄いねぇ…音や光だけじゃない、感触まで再現してる。どうやってるんだろ………いや、その辺の細かい理屈は…良くわからないし、どうでもいいか。」
「居たぞ、あそこだ!」
「んー?あー、ついてる!獲物を探す手間が省けた!」
「獲物はテメェの方だ!ここであったが百年目、縛につけ“辻斬り道化”!」
「あは………思い上がりも大概にしてよね。たった五人程度で、小生に勝てるわけないじゃない?せめて、フルレイドクラスの数を連れてきてくれなくちゃ………直ぐに、終わっちゃうわ?」
剣を突きつけ殺気立つ五人に、道化面の少女が煽るように嘲り嗤う。
次の瞬間、少女の姿が霞のように消え─
五人のうち二人が、瞬く間に物言わぬ骸になった。
「………は?」
「デルタ、ガンマ!?」
「だから言ったじゃない、直ぐに終わっちゃうわ、って。遅すぎるのよ、貴方達。」
首が落とされた死体が光に変わって消えた直後、もう一人が胴体を輪切りにされる。さらに一人、袈裟懸けに両断され──そこには、道化面の少女と最初に剣を突きつけた青年だけが残った。
「あとは、貴方だけ。」
「くそっ…『スラッシュ』!」
「何度も同じことを言うのは嫌いなの。貴方達は、遅すぎる。『鏡花流壱の型 桜花閃』。」
青年が振り上げた剣に銀光が宿る。
呆れたように首を振る少女が、刀を鞘に納めると、鞘ごと刀が淡い桜色の光を纏う。
青年が、少女の頭を目掛けて剣を振り下ろす。しかし、少女が拳一つ分体を後方にスライドさせたことで、その剣閃は空を切った。
時が止まったように硬直する青年に、少女が容赦なく抜き放つ。狙い違わず、その一太刀は青年の首を撥ね飛ばした。
「………あら、今殺った人達…PKKだったのね、縛につけとか言ってたし。カルマ値下がっちゃった………そろそろ懺悔しにいった方がいいかしら?」
消える死体を尻目に、血を払うように刀を振って鞘に戻す。
「さて、と………回廊、展開。」
何事か呟きながら、何処からともなく取り出した立方体を握りつぶす。すると、目の前の空間が捻れ曲り、人一人が通れるほどの大きさの青い不透明な裂け目が表れた。
「今日は撤収、っと。」
そう溢して、少女はその場から姿を消した。
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