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そこからは、最早一方的な蹂躙だった。
砕けた拳で殴りかかろうとする男の腹に、shYnoの爪先が突き刺さる。蹲る男の腕をロックし、顔から水面に叩きつける。襟首を掴み引き起こして、もう一度顔から叩きつける。
突っ伏す男の足首を掴み、片手で振り回して手近な木に叩きつける。呻く男を無造作に放り捨て、その横腹に強烈な蹴りを叩き込んだ。
波紋を刻みながら男が転がり、一際太い木にぶつかって止まる。咳き込みながら立ち上がろうとした男の腹に、再び爪先が刺さる。
蹲る男を冷たい目つきで見下ろし、shYnoが口を開いた。
「どうした、こんなものか?」
「が……は、笑わせ……んな……この程度……」
「……ふっ。存外つまらん奴だ。……終わりだ。」
振り上げた脚を、力の限りに首筋に振り落とす。
強烈な一撃が、男の首を千切り飛ばす。
吹き飛ぶ頭と倒れ伏す体の両方に亀裂が走り、男の仮想肉体が砕け散った。
「対象撃破。ふう……すっとした。(衣:もう少し、骨があるかと思ったのに。)(喜:つまらんのう。)(詩:見覚えのある拳打ばかり、退屈すぎた。極真はもう知ってるんだよ……大分殺意高めのやつだったけど。)(衣:確かに、狙いに迷いがなかったね。)(喜:わえらの方が上じゃったがな。)」
そう口にしながらも、徐に右足を上げ、目の前にあった木を踏み抜くように蹴る。
軋むような音を響かせ、蹴られた木がへし折れた。
「すっとしたけど……まだ足りないな。(衣:同感だけど、あんだけ暴れ回ってまだ足りないのか。)(喜:難儀じゃな。怒り、苛立ち、不快感……どれだけぶつけても収まらぬわ。)」
『余り荒らさないでほしいのだけれど。時間で元通りになるとはいえ、この一帯は私の住処よ。』
「……それは失礼。ひょっとして、さっきうちが蹴散らしてた蛙ども、あんたのペットだったりする?」
『冗談はやめて。あれらは私の住処を我が物顔で占領している、貴女達人間の言葉で言うなら不法占拠者よ。他の表現をするなら、ゴキブリやネズミのようなものよ。叩きのめして追い払ってくれたことには感謝している。でも、その後さっきの男と暴れ回ったことについては話は別よ。』
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