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「うちも悪いけど、仕掛けてきたの男の方だよ?」
『応じて暴れているのだから、同罪よ。……名乗ってなかったわね、私はルサウカ。水の精霊。』
「……つかぬ事を聞くけど、さっきうちが蹴り殺したヴォジャノーイって」
『は?ヴォジャ……なに?知らないわよそんなやつ。』
「偉そうな口調の八尺あまりの巨体の蛙頭なんだけど」
『知らない知らない、何よその怪物?』
「伝承によるとあんたの夫とする説があるみたいなんだけど」
『次そんな悍ましいことを口にしたら押し潰すわよ?』
「失礼、気をつける。」
『とにかく、ここら一帯は私の縄張りだから。踏み荒らしたら只では済ませないわ。』
「わかった、悪かったね。」
『気をつけなさいね。私はまだ話がわかる方の精霊だから良いけれど、火や土の連中は面倒よ。』
「地、水、火……風は?」
『あれは私には理解できないものよ。気紛れで、身勝手で、自由奔放。貴女も、この世界を旅していれば何れは出会うかもね。……そうだ。』
唐突に、ルサウカと名乗った半透明の女性がshYnoの左手首を掴む。振り払おうとするより早く、手首から手の甲にかけて淡い土耳古青の光が走る。
「……なにこれ?」
『通行証、のようなものね。踏み荒らされたのはムカつくけど、それを差し引いても今とっても気分がいいの。だから、あげるわ。次は何か、手土産になるものをもっていらっしゃいな。もてなしてあげるから。』
「……ごめん、そしてありがとう。」
『謝罪はもういいわ。気をつけて帰りなさいね。……送ってあげようか?貴女が行ったことのある水場限定になるけど。』
「……そんなこと出来るの?」
『舐めてもらっては困るわね、これでも水の精霊よ?あまり名の知れた精霊ではないかもしれないけど、力は引けをとらないわよ。』
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